僕は生まれ育った町を歩いていた。
何千回も何万回も歩いた、見慣れた景色。
人の足音、車の音。
どこかで聴いたような音楽、巨大スクリーンのアナウンス。
その町で僕は夢を見た。
そこはいつも通っている学校の教室。
変わったのはクラスメートの数だろうか。
40ぴったり机があるのに、生徒は僕を含め7人。
先生は平然と授業を行う。
仕方が無いから教科書とノートを開き授業を受けようと思った時、
同じ部活の友達が授業中にも関わらず、僕の机の前に来た。
制服の内ポケットからピストルを出し、僕の頭に銃口を突きつけた。
必死に説得しようとしたが、彼は何も言わない。
仕方無い。
僕は指でピストルの形を作り、彼の頭を撃つジェスチャーをした。
彼の頭は吹っ飛び、僕に血が掛かった。
目を瞑り、これは夢だと自分に言い聞かせる。
僕は一瞬目を覚まし、空を見上げてまた眠ってしまった。
さっきと同じ教室。
机の数は変わらない。
ただクラスメートの数が1人減っただけであった。
授業は変わって理科だった。
20分程、普通に授業を行っていると、
理科の先生は突然意味の分からない言葉を発し、
先生の机の横に置いてあった日本刀で生徒を斬りつけた。
全員殺される。
でも夢の中で眠ればこの夢から解放される事を知っていた。
だが僕は眠らなかった。
目の前でどんどん減っていく生徒。
尊敬していた先生の暴走。
許せなかった。
僕は見えない刀を握る。
込み上げる怒りは先生に刀を振り上げた。
先生は真っ二つに斬れた。
この教室で生きているのは僕一人。
初めて人を殺してしまった事と静かな教室のせいで、
僕は独りになった。
この孤独感に耐えられないんだ。
今までずっと独りだったから。
目を瞑り、頭の中を真っ白にする。
眠れ、眠れ。
そこは薄暗い教室。
オレンジ色の光で照らされている。
後ろを振り向くと、ただ一点を見つめて動かない生徒が椅子に座っている。
ずっと後ろまでそれは続いていた。
一番後ろは見えなかった。
その教室の一番前にはギターが置いてある。
僕はそれを自分の机に持っていき、弾こうと思った。
ギターを持ち、机と机の間を歩いてく。
300列目くらいまで来たところでギターを机にぶつけてしまった。
その机の持ち主は僕を見て、動かなかった。
どこかで見たことのあるような、女の子。
風がどこからか吹き、その子は砂になって消えた。
僕のギターも砂になって、消えた。
僕自身も砂になって消えた、と思う。
僕は親しい友達とバスに乗っていた。
皆で、くだらない話をして笑ってた。
笑ってる仲間の中にはあの子が居た。
どこかで見たことのあるような、女の子。
他には仲のよい女子も一緒に笑ってた。
皆の笑いが途切れると、あの子はすごく哀しそうな顔をした。
今にも涙がこぼれてしまいそうな、弱い顔。
それに気が付いたのは、僕と仲のよい女子だけだった。
それからも何度かあの子は周りに合わせて笑っては、哀しい顔をした。
そうして何時間か経つと、目的地についたようだった。
バスから降りると、そこは何もない砂漠。
満月が見えた。
運転手はどこかに居なくなっていた。
砂漠に取り残されたのは、僕を含め7人。
ふと気づくと、そこには理科の先生の真っ二つになった死体があった。
誰も驚かなかった。
死体1つくらい、どうって事ないだろう?
7人の中の2人は泣きながら言った。
『もう助からないんだよう。俺たちは終わったんだよう。』
うるさい、黙れ。
まだ終わったわけじゃない。
僕はその2人を斬った。
見える刀で。
斬られた内の1人は、頭にピストルで撃たれた痕があった。
『貴方が全員殺したの。』
僕の後ろであの子は言った。
分かってる、そんな事。
僕はどうなるんだ?殺しをした事が誰かにばれたら僕はどうなる?
誰にも言わせない。
僕はそこに居る4人を片っ端から斬った。
あの子を斬ろうとした時、僕は気づいた。
あの子が泣いている。
思い出した。
無表情な子じゃなかった。
泣くような子でもなかった。
いつも笑っていて、僕はその笑顔に元気をもらっていたという事。
僕の手の届くような人ではなかった。
あの子は突然居なくなった。
さよならは言えなかった。
やめてくれ。
もう泣かないでくれ。
『うわあああああああああああ』
さくり、とあの子は僕のお腹にナイフを刺した。
血ではなく砂がでた。
あの子は泣いていた。
砂を吐き、僕は言った。
『さよなら』








